とりあえずブログランキングのクリックをよろしく!
毎週末、コンサル生から2週前の一週間分のトレード成績が送られてくる。私はこのやり取りを毎週楽しみにしている。
『今週、みんな勝ってるかな?』
全員が上手くトレードしているわけではない。本人は売買手法通りにトレードしているつもりでも、トータル収支がマイナスの人もいる。また、数か月前まではマイナス収支だったのに、いろいろアドバイス(アホなトレードに対し刺激となる優しい助言)を送って、月間で数百ピップス勝てるようになった人もいる。
最低でも売買ルールに外れたトレードをやらなくなり、売買ルールに合致していて更に(完璧とは言えないが)優位性のあるエントリーが意識的にできるようになったトレーダーが数人いる。ただ、彼女・彼らがあることで頭打ちになっている。それが、
チキン利食いだ。
優位性ある抜群のエントリーをしているにも関わらず、わずかな利益で決済してしまう。ルール通りにポジションを保有していればプラス200~300pipsは取れた相場だったのに。
アナタは何故、チキン利食いをするのか?
まず先に、その答えを簡潔に示しておく。
アナタが超高性能な脳を持っているから
驚いたかい?
チキン利食いは人として自然な行為であり、正常な脳を持っている証拠です。
まず大前提として、それなりの売買手法があってもトレーダーがチキン利食いをするのは普通のこと。
そう、普通のトレーダーなんだ。決してネガティブな意味や嫌味で書いているのではない。本当に普通のこと。何故なら、
本来、人間は得をすることより、損失を回避することを優先する生き物だから。
数年前、俺の嫁が心理学のコースを受講していた時期があった。俺はその教科書をチラッと読んだことがある。そこに書いてあったのは、
人類がまだジャングルで暮らしていた時代、毒蛇や野生のトラ、または熊と遭遇することがあった。その時、そういった野生の危険動物を『怖い』と思う感情を持っていなければ生き残れなかった。怖い・危ないと感じることができるから生命の危機を回避することができた。だから人間が生まれて最初に覚える本能的な感情は、『恐れ』である。
つまり、『恐れ』を感じるのはアナタが弱いからではない。人間が生き残るために備わった本能的な感情なんだ。
〔死=生命の損失〕と置き換えると、寿命ではなく外的要因による〔生命の損失〕を避けようとするのはごくごく当然のこと。もし仮に、野生のツキノワグマに遭遇しカワ(・∀・)イイ!!っと言って熊に近寄っていく人がいたら正常だと思うか?まともじゃねぇよ、そんな人。ムツゴロウさんだけだwww
FXに関わりいろいろ学んでいくと、遅かれ早かれ〔プロスペクト理論〕に辿り着く。
プロスペクト理論とは、1979年に米国のダニエル・カールマンとエイモス・トベルスキーという2人の心理学者・行動経済学者によって発表され、2002年にノーベル経済学賞を受賞した。プロスペクト理論は「損失回避の法則」とも言われる。ちなみにプロスペクト(Prospect)は〔見込み、予測、期待〕っていう意味の単語。
プロスペクト理論を簡単に説明すると「目の前に提示されたものの損失の度合いにより、人の意思決定は変化する」というもの。人間が行動を意思決定する際、「利益を得る」場面では確実に取れる利益を。「損失がある」場面では損失の全面回避を最優先に。これがプロスペクト理論の考え方。
具体的にある例を挙げて説明しよう。
アナタは、あるカジノに訪れたとしましょう。そこで、とあるサイコロゲームが何度も繰り返し行われていた。アナタがゲームに参加するかどうかは何度でも自由に意思決定することができます。では、そのゲームルールとは、
ゲームに参加する場合
サイコロの出目が偶数の場合:$20,000を受け取ることができる。
サイコロの出目が奇数の場合:$10,000を支払うことになる。
ゲームに参加しない場合
無条件に$2,000 を受け取ることができる。
アナタは、このゲームに参加しますか?
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
この質問に対し、多くの人はゲームに参加せず、確実に$2,000を受け取ることを選びます。$10,000を失うリスクを背負うくらいなら、小さくても確実に得られる$2,000の利益を選びます。ハイリスク・ハイリターンよりも、ノーリスク・ローリターンを好む。そんな人間の心理が働いている典型例です。私が思うサラリーマン思考が、まさにこの行動心理に相当する。
このゲームに参加しないという意思決定を下すことこそが、〔プロスペクト理論〕。
〔利益を得る〕ことよりも〔損失を回避する〕ことを優先することが人間の本能だと証明したのが、〔プロスペクト理論〕だ。
プロスペクト理論
利益獲得 < 損失回避
でもね、冷静に考えてみてください。
ゲームに参加した場合の勝率は50%ですよね。その期待値は、
{$20,000+(-$10,000)}÷ 2 = $5,000
となり、ゲームに勝とうが負けようがお構いなしに、ゲームに参加するたびに$5,000を受け取るという意味になります。
ゲームに参加しない場合の期待値は、無条件に$2,000。
つまり、
勝とうが負けようが結果なんか気にせず、繰り返しゲームに参加し続けたほうが得られる利益が大きいことが数学的に立証できる。
※期待値とは、確率に基づく平均取得単価のこと。
〔プロスペクト理論〕を元に考えると、このサイコロゲームに参加しないのは人間の本能に基づいており、サイコロゲームに参加するのは人間の本能から逸脱した行為とも言える。しかし、簡単に確率を計算するだけで、
サイコロゲームに参加したほうが経済的合理性がある、と判断できます。
え、ちょっと待てよ。経済的合理性を追求するってことは人間の本能から逸脱した行為なのだろうか?感情よりも合理性や目的達成を優先させることはサイコパスだというのか?
サイコパスの主な特徴として、
- 自信家
- 口がうまい
- プレッシャーに強い
- 自己中心的
- 無責任
- 恐怖心がない
と言われる。だからこそ、
- 一国の大統領や首相
- 大企業のCEO
- 法廷弁護士
- 外科医
など非情な決断を迫られる職業に就く人はサイコパスと言われるのだろうか。その答えは俺には分からない。ただ、数学的に立証できる経済的合理性があれば
恐れることこそが〔機会損失〕を生む
と私は思う。
- 機会損失とは、本来得られていたはずの利益を得られないこと。オポチュニティーコストとも言う。
一般的にサイコパスという言葉はネガティブな意味を込めて使われるが、ここでは犯罪者を意味して使ったのではなく、感情に左右されず経済的合理性に基づいて意思決定することの比喩表現として使った。
誰だって、含み益がドローダウンするのは嫌さ。
あるトレード事例
3日前、ヨーロッパの一国がデフォルトする可能性があるというニュースが流れ、ユーロが暴落した。アナタはしっかりと相場環境を認識し、リバウンドを狙って抜群のタイミングで売買ルール通りにEURUSDを〔買いエントリー〕してポジションに含み益が乗った。
アナタはそっとMT4のターミナルを開き、
含み益を見てほくそ笑む。
さっきまでの含み益は10万円だったのに、
陽線がグングン伸びて含み益が30万円を超えてきた。
そして更に1時間後、
含み益は60万円を超えた。
決済ルール上の目標指値に達したら150万円の想定利益だが、
60万円でも十分嬉しい利益。
しかも今週のアナタは連敗が続いており、
総額60万円の損失を出していた。
今ここで決済すれば、
今までの損失がチャラになる。
そう、アナタは迷っている。
売買ルールを守り切るより、
プレッシャーから解放されたい。
そんな時、チャートに陰線が現れ、
アナタの含み益がドローダウンしてきた。
そして、60万円あった最大含み益が40万円になった。
まるで20万円の〔損失〕を被ったような感覚。
更に前月には、60万円の含み益を出したポジションを全額飛ばしており、
60万円の〔損失〕を被ったような感覚が残っている。
このポジションも同じように飛ばしてしまうのではないか、
という〔恐怖心〕に襲われた。
心拍数が上がるのを感じ、
マウスを握る右手の人差し指が震える。
その時、アナタはターミナルに表示されるポジション右側にある✖を無意識にクリックした。
アナタは決済した。
おめでとう。
アナタはプレッシャーから解放された。
これが、チキン利食いだ。
確固たる計画もなく、感情的に決済した。月間のトータル収支はトントンか、わずかなマイナス程度。
翌日、相場は決済ルール上の目標指値に届いた。それを見て『自分の相場観は合っていた』と、小銭を得た自分を慰める。ポジションを保有していた場合、月間トータル収支は大きくプラスになっていたにも関わらず。。
プロスペクト理論で立証された通り、人間は本能的に損失を回避することを最優先に意思決定する生き物。
アナタのチキン利食いは、アナタの忍耐力不足が原因ではなく、人間として正常な行為です。本能的に損失を回避しようと脳が正常に機能しただけ。しかも、〔損した過去の事実〕を脳は強烈に記憶している。
含み益を全額飛ばしたというのは、実際の収支は単にプラスマイナスゼロということであり(コミッションを考慮せず)、事実上の損失ではない。しかし、本能的に脳は〔含み益を失った〕ことに対してフォーカスする。
間違いなくアナタは超高性能な脳を持っている証拠です。
しかし、
経済的合理性に裏付けられた行動には必ずリスクを伴います。ただし、その意思決定を恐れるということは、大きな機会損失を生む。
もし相場が過去の値動きと全く同じように動くのであれば
- 同じ銘柄で
- 同じトレーダーが
- 同じ取引数量で
- 同じ時間に
- 同じ売買方向にエントリー
これらの条件が成立しないと実現しないはず。
確率的にこれだけの条件が成立するだろうか?
あり得ない!
個々の相場とは、確率的に関連性のない独立した事象です。確かにクロス円などは似たような値動きをすることもありますが、全く同じ値動きではありません。
また、含み益を出した銘柄に複数回エントリーすることを〔追撃〕とか〔増し玉〕と呼びますが、やはりそれぞれのポジションは確率的に関連性のない独立した事象です。銘柄が違えば〔追撃〕とは呼びません。
だから〔オリジナルポジション〕と〔追撃ポジション〕の決済が同じである必要はなく、それぞれ独立した決済を考慮しても構いません。ちなみに私は〔追撃ポジション〕は早めに決済し、〔オリジナルポジション〕は保有して利益を引っ張るようにしています。なぜなら相場に押し目や戻りが来た場合、〔オリジナルポジション〕は生き残る可能性が高いからです。
含み益を全額飛ばした過去の事実と、現在保有しているポジションは、確率的に関連性のない独立した事象です。前回飛ばしたからと言って、今回アナタが保有している含み益のポジションを飛ばすとは限らない。
エントリー恐怖症の真実
直近で複数回損切りしているからと言って、次もまた損切りになるとは限りません。なぜなら、個々の相場とは、確率的に関連性のない独立した事象だから。
また損切りになるかもしれない!
とアナタがエントリーを躊躇したのは、
アナタが弱いからではありません。
人間の本能によって、アナタの脳が〔過去の損切りした事実〕を強烈に記憶しているだけです。むしろ、エントリーを躊躇したアナタは正常なのです。
但し、忘れないでください。
経済的合理性に裏付けられた行動には必ずリスクを伴いますが、その意思決定を恐れるということは、大きな機会損失を生みます。
チキン利食いとエントリー恐怖症の原因は同じです。失うことを回避しようとする人間の本能が原因です。チキン利食いやエントリーに躊躇するのは、普通のトレーダーが普通である証拠です。決して劣っているという意味ではありません。ただ普通なだけなのです。
言い換えると、
トレーダーとしての経済的成功とは、人間の本能を超えた先にあります。平均的ではなく、ズバ抜けて理論的・合理的な思考が必要です。
怯えた金では勝てない
それでもまだ、
連敗の穴埋めのためにチキン利食いしますか?
連敗を回避したいのでエントリーしませんか?
人間の本能だから仕方がないというのですね。
そんな言い訳をするくらいなら、
自分を人間だと思うな!
正義の味方 ウルトラマンだと思いなさい!
どんなに打ちのめされても、ウルトラマンは悪の怪獣を恐れない!
生真面目すぎるのは良くありません。たまにはふざけましょう。
人間である以上、完璧に感情を押し殺すことなどできない
決してサイコパスではないアナタは、トレード中に感情に左右される自分自身を弱いと感じる必要はありません。
もしトレード中に心拍数が上がってきたり、失敗しそうな予感がして〔恐れ〕を感じても、自分を否定する必要はない。
今、自分は怖いなって感じてんだなって、
ありのままの自分を受け入れるだけでいい。
俺だって、今だにエントリーに躊躇することはある!
次に、そのトレードに失敗した自分を思い浮かべてくれ
- 飛ばした含み益の金額
- 損切りした金額
明確に思い浮かべるんだ。そして現在の口座残高から失った額を引いて考えろ。
確固たる売買ルールを学び、自分が思う優位性ある相場に出会った。総資金に対するリスク割合を0.5%以下に抑え、資金管理も抜かりはない。それでもトレードに失敗した。損切りした。
その失敗で、
アナタはトレードができなくなるのか?
トレード資金を失ってしまうのか?
相場から退場するのか?
そんなに失敗した自分を許せないのか?
オマエは神か!
損切りは、アナタのプライドをほんの少し傷つけるかもしれません。しかし、金を稼ぐためにはプライドなんて必要ありません。必要のないプライドなんて捨ててしまえ!損切りはトレーダーとしてのアナタを否定するものではありません。損切りしたことのないプロトレーダーなんていないのだから。むしろ、アナタ以上に負けトレードを経験してますよ。
ボクシングの世界チャンピオンは、パンチを受けたことがないと思いますか?むしろ、誰よりもパンチを受けた経験が多いのではないでしょうか。だからこそ、パンチを回避する技術が上達し、攻撃チャンスを見抜くセンスやバランスに長けたのではないでしょうか。
やってはいけないことを理解することで、やるべきことが明確に理解できるようになる。
トレードに失敗しても
まだリングに立っていられるのなら、
次のチャンスに挑戦する軍資金を温存できるなら、
アナタが感じているリスクは既にリスクではない。
本当のリスクとは、
自分が何をしているのか理解していないことです。
リスクを受け入れた時、失敗して幾らかを失ってもリスクではない
まぐれでも上手く行けば大きな利益を手に入れることができるのだから
利益っていうのは実力で得るものではなく、運が良いときに得られるもの。
リスクを受け入れたなら、チャンス=利益となる。
運とはツキの集合体であり、ツキとはチャンスだ。優位性のあるチャンスに対する試行回数を増やすことで『大数の法則』を機能させることができ、結果的に運が好転する。つまり、運は自分でコントロールできるのだ!
実力で相場に勝つ!という考え方は、少々傲慢な気がします。謙虚な気持ちで『運が良かったから勝てた!』って考えるほうがトレードでは役に立ちます。傲慢になると有頂天になります。『頂点が有る』と書いて〔有頂天〕。有頂天になると必ず落ちます。実社会でも同じですよね。
優位性ある意思決定を下しても、
勝ちトレードと負けトレードはランダムに分布する。
経験的確率は、
相当数の試行回数を経て
理論的確率に収束するものである。
これを『大数の法則』という。
だから勝とうが負けようが個別のトレード結果なんか気にせず、優位性のあるチャンスに対する回転率を上げてトータル収支をプラスにすることを意識しよう。トータル収支をプラスにするコツは、勝率より損益比率を上げること。破産確率表を見れば一発で分かるはず。勝率が低くても高い損益比率さえあれば、金を増やすことができる!これは数学的に疑いの余地のない理論的事実です。いちいちチキン利食いしている場合ではないのです!
個々の相場とは、確率的に関連性のない独立した事象です。すぐにはできなくても感情的に行動せず、理論的思考になるように意識しよう。
FXでは経済的合理性に見合った意思決定を!
チキン利食いへの具体的対策方法
含み益を出してもMT4のターミナルを開かない。
含み益の金額を見ない。
チャートに集中して他のトレーダーの思惑を考える。
期待を排除し、利食いには合理的な価格に指値を置く。
損益比率が10倍以上見込めるなら、経済的に合理的な指値と考えて良い。
感情がブレるなら、思い切ってチャートを見ない。
指値にヒットするかどうかを運任せにする。
大丈夫だよ、運は自分でコントロールできるから!
ドローダウンで決済するくらいなら、期待することを捨てて含み益が伸びた瞬間に決済しちゃいな!相場が大きく動いた後は、どうせ押し目か反転になるのだから。
相場の優位性と売買手法の理論的確率を理解したら、エントリーの回転率を上げたり、数日間ポジションを保有しても、アナタが恐れるほどトータル収支が酷いことにならないことが分かってくる。むしろ、個別のトレード結果に執着するからトータル収支が悪くなるのです。
では、今日も一日ごきげんよう!
この記事は確固たる売買ルールを持ち、優位性ある相場を理解できるようになったけど、思うような結果が伴わないトレーダーに向けて書きました。
併せて読んでおきたい記事
あとがき
出勤のために自宅から最寄り駅に向かうアナタは、町内で有名な〔嘘つきジジイ〕に出会った。そして、そのジジイが言った。
- アンタの家の玄関前に100万円が落ちてたよ。
- アンタの家に泥棒が入って行くの見たよ。
アナタなら、どう言われたら自宅に引き返しますか?
おそらく、この質問の答えもプロスペクト理論に収束していく。
COMMENTS